CASE14 東京都/豊島区(詳細版)
在宅医療連携の歴史は30年以上
国、都の事業を引き継ぎながら連携体制を充実化
豊島区のここがすごい!
○昭和時代から続く三師会と行政を核とした連携
豊島区は行政も含めた多職種連携の進む地域として知られている。その歴史は在宅難病患者訪問診療事業に着手した1988(昭和63)年頃から続いている
○モデル事業を引き継ぎ「豊島区在宅医療連携推進会議」を2010年にスタート
東京都から受託した在宅医療ネットワーク推進事業(2008〜2009年)を引き継ぎ、2010年に豊島区在宅医療連携推進会議をスタート
○耳鼻科と歯科の協働で口腔・嚥下障害を支援
内科および耳鼻科医と歯科医の関係が良好で、専門家同士が協働して行う口腔・嚥下障害支援の仕組みを確立
○ 昭和時代から進む三師会と行政を核とした連携
豊島区医師会は1988(昭和63)年に在宅難病患者訪問診療事業に着手。豊島区歯科医師会、豊島区薬剤師会はじめ、専門医、保健師、ソーシャルワーカー(SW)、区のヘルパーなど在宅難病患者に必要な職種を巻き込みながら支援体制を整えていきました。この事業をきっかけに多職種連携の土台ができ、難病患者以外の在宅医療・ケアにおいても、その関係が活かされるようになりました。
活発な地域連携が評価されモデル事業を受託
こうした活動が高く評価され、東京都のモデル事業「在宅医療ネットワーク推進事業」を受託したのは2008年。手挙げではなく、都に選ばれての受託でした。2年間にわたり三師会を中心に組織した「在宅医療ネットワーク推進会議」を運営しながら、ゴルフコンペや飲み会など、インフォーマルな交流の場も多く設け、連携強化とともに人間としての信頼関係の醸成に努めました。これにより三師会の結束はより強まり、現在まで良好な関係が続いています。
在宅難病患者の訪問診療はいまも充実
在宅難病患者訪問診療事業を開始してから30年。この間、在宅医療を取り巻く環境は大きく変化しましたが、豊島区では難病患者の訪問診療をいまもしっかりと続けています。この事業を始めた当時から、難病医療に熱心な医師が活動を牽引。いまではその医師の後継者等が、多職種にも呼びかけて難病患者の支援の輪を広げているのです。「特に重い症例など困ったときには医師会の理事に相談すれば必ず対応してくれます」とは、長く難病患者の支援を続けてきたMSWの言葉。豊島区の在宅難病患者訪問診療事業は、困難の多々あるケースでもチームで支えることで重度な介護や医療処置の多い場合の在宅療養をも可能にすることを検証し、在宅医療に関わる人々の励ましになっている。
○モデル事業を引き継ぎ「在宅医療連携推進会議」を2010年にスタート
2年間限定だった在宅医療ネットワーク推進事業はその後、豊島区に引き継がれ、2010年、新たに「在宅医療連携推進会議」が設置されました(写真1)。同会議の目的は、区民が安心して受けられる在宅医療の仕組みをつくること。ここで話し合われたことをもとに、さまざまな在宅医療連携に関する取り組みを進めています(図1)。事務局を豊島区保健福祉部地域保健課内に置き、三師会と豊島区の合議により運営しています。
写真1◆在宅医療連携推進会議の様子(2018年度第1回会議)。外部のオブザーバーや傍聴者が参加することもある
図1◆豊島区が推進する在宅医療連携
図2◆在宅医療連携推進会議のもとに組織されている5つの専門部会
写真2◆豊島区在宅医療相談窓口。電話相談が基本だが、ケースによっては面談や訪問にも応じている
写真3◆豊島区在宅医療相談窓口のスタッフは2名でスタートし2017年に3名に増員(常勤換算2.5名)。右端はMSWの良き相談相手の1人である医師会理事
写真4◆JR池袋駅から徒歩5分ほどの場所にある豊島区医師会館。在宅医療連携推進会議も同会館内の会議室で行われている
POINT!年度末の交流会で「来年も頑張ろう!」
これまで紹介した会議や部会活動とは別に、豊島区を幹事とする在宅医療連携のための交流会が毎年、年度末の頃に行われています。参加者は、在宅医療・ケアに携わる専門職、在宅医療連携推進会議の各部会委員、在宅医療コーディネーター研修(その他の活動情報参照)に参加したケアマネジャーなど。講演やデモンストレーションと、その後の懇親会の二部構成で、1年間の振り返りと顔の見える関係の再確認、そして英気を養う機会にもなっています。「来年度も頑張ろう」と励まし合える重要な1日です。
地域DATA(豊島区)
面積:13.01k㎡人口(2015年国勢調査):291,167人
高齢化率(2015年、65歳以上):20.00%
一般診療所数(2017年10月現在):392
病院数(2017年10月現在):14